バリアフリーナビプロジェクトでは、バリアフリーを皆さんに知っていただくために歩行空間にまつわるコンテンツを紹介していきます。今回は「歩行空間ネットワークデータ」についてです。
歩行空間ネットワークデータを知っていますか? 簡単にいうと、街の中で人が移動する経路上に存在するさまざまなバリア情報のデータベースです。このデータベースをアプリなどで活用することで、車いすを利用する人に最適なルートを提示したりといったことができるようになります。そんな歩行空間ネットワークデータについて事例とともに紹介して行きたいと思います。
歩行空間ネットワークデータとは?
「歩行空間」とは、人が歩く空間のことです。歩道や横断歩道、一般道路、駅前の広場など幅広い場所が当てはまります。そこには通常の歩行者だけではなく、車いす、シニアカー、ベビーカー、自動配送ロボットなどさまざまな人や物も移動する可能性があります。
歩行空間ネットワークデータは、その歩行空間に存在する段差や幅員(道の幅)などの移動を困難にする要素を地図上にまとめたものです。「ここに何cmの段差がある」「ここは道幅が狭くなっている」といった具合です。
歩行空間ネットワークデータを活用すれば、バリアフリーなルートの案内ができます(歩行空間ネットワークデータ等整備仕様案 )
そのため、データを活用すれば、知らない土地でもバリアフリールートを知ることがきるため、車いすやベビーカーの人には便利なものとなっています。その他にも、最短経路の案内もしてくれるため、障害の有無や年齢・言語に関わらずさまざまな人が利用することができるサービスとなっています。
事例を見てみよう!
歩行空間ネットワークデータを使うとどうのようなことができるのか、実際にデータを用いている事例を紹介したいと思います。
自動走行ロボット「FORRO」は、歩行空間ネットワークデータを活用することでバリアフリー情報も取り入れています。
その他にも、2021年に開催した東京2020パラリンピックでは、競技場周辺のバリアフリールートの情報が取得できるNTT 研究所が開発した新たなWeb アプリ「Japan Walk Guide」が活用されました。
さまざまな方法で歩行空間ネットワークデータを利用することで、自分だけではなく多くの人が便利に使えるサービスなどが増えていくといいですね。
データはどのように動いている?
もう少し詳しく解説していきましょう。
データは、3層構造になっています。
第1層データは、歩行者移動支援サービスの現実に必要不可欠であり、歩行空間ネットワークデータに必須となる情報項目。例えば、坂道の傾斜がどのくらい急なのか、段差の高さはどのくらいあるのか、といった情報です。
第2層データは、歩行者移動支援サービスの高度化のため、地域状況当に応じて任意に選択し追加する情報項目。例えば、歩道に屋根が付いていて雨に濡れないとか、手すりがあるため移動しやすいなどの情報です。
第3層データは、第1層・第2層データには含まれないが地域特有のサービスに必要であり、地域のニーズ等に応じて任意に追加する情報項目とされています。この層には、上記の2つに含まれないけれどバリアフリーに役立つ情報を追加することができるのです。
データを入力する際にはコードや数字を使用しています。例えば、幅員や段差・歩行者用信号機の有無などはコードによって記載し、幅員の緯度や軽度は10進法で記載します。
場所情報コードの考え方/出典:国土地理院
また、場所情報のコードは空間を緯度・経度・段数によって分割し、理論場所情報コードを定め、空間内にある位置情報点に対し、連番をつけて場所コードを発行します。なお、場所情報コードは国土地理院に申請し発行してもらうコードとなっています。
歩行空間ネットワークデータへの情報の入力は、歩行空間ネットワークデータ整備ツール(https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/soukou/sogoseisaku_soukou_mn_000008.html)を使います。
このツールの利用には申請が必要となりますので、興味がある方は申し込んでみてはいかがでしょうか。
昨年には、学校の生徒たちが自分たちの身近な地域の情報を登録した実証実験も行われました(https://www.barrierfreenavi.go.jp/closswalk/2094786.html)。こうした取り組みで、バリアフリーへの関心が広がっていくといいですね。