車いすユーザーである筆者が日常生活の中で感じるあれこれをお届けする連載コラム第7回。車いす利用者の電車での移動についてお話しした前回に続き、今回はグーグルマップの便利な使い方をお話しします!
どうもアカザーです! 2000年にスノーボードで脊髄を損傷して以来、車いすユーザーを22年ほどやっています。22年前、はじめて車いすで電車に乗った時非常に心細かったことを覚えています。しかし時代は令和、22年間にはなかったスマホという車いすユーザーにとって健常者以上に利便性が高いガジェットがあります! といワケで今回は、今ふうの車いすユーザーの電車移動、「車いすユーザーの電車移動withグーグルナビ」というテーマで書いていきまっせ~。
グーグルマップのルート検索って、めっちゃ車いすユーザーと相性がいいんです。この検索画面だけでも3つほど車いすユーザーに有益な情報があります。
【Introducing Accessible Places on Google Maps】
車いすの電車移動withグーグルナビ
コロナ禍もあって、しばらくご無沙汰だった電車移動。このコラムの実証実!?のために2年ぶりに乗ってきました。
コロナ期間中は自粛していた電車に2年ぶりに乗車。なんか妙な緊張感が!(笑)
その個人的な実証実験は「車いすでの電車移動withグーグルナビ」です。グーグルマップのナビ機能、めっちゃ便利ですよね~。選択できるルートの多さも神なら、電車が今どこを走っているのかがスマホ画面でわかるとか、未来過ぎやしませんか!?
てな感じで、現代人の移動には必要不可欠ともいえるグーグルマップのナビ機能なんですが、車いすユーザーの電車移動時にもめっちゃ使えるんですよ!
グーグルマップのナビ機能は車いすユーザーにとっても超便利
という訳で、今回はオレが実際にグーグルナビの車いすオプション機能を使って、大江戸線月島駅から、門前仲町で東西線に乗り換えて、よく行くトレーニングジムの最寄り駅の東西線木場駅までの移動ルートを検証してみます。
やり方は簡単。
【グーグルマップナビ・車いすユーザーオプション使用法】
1. グーグルの音声検索で目的地を検索
2. 検索結果の経路案内を押す
3. 電車移動を選択
4. 経路オプションから車椅子対応にチェック
検索オプションから車椅子対応にチェックを入れるだけ!
これだけで、車いすで電車を利用する場合の理想的なルートが表示されるんですヨ! 具体的にはエレベーターのある駅出入口や、車いす対応車両が何両目にあるのか?などナビゲーションしてくれます。
20分ほどで目的地に到着予定の電車ルートを選択し、いざ移動開始! 月島駅では階段しかない出入口の背後にあるビル内のエレベーターを使い改札まで降りる、というルートが案内され、そのルートに沿って進むと車いすでも問題なく改札からホームへ。
ちなみにこの記事のための画面をキャプチャーしていると、乗るべき電車が通過して行った画面が撮れました(笑)。ていうかグーグルマップ上に乗るべき電車がリアルタイム表示されるって、サイバー過ぎないすか!? もはやSF的未来じゃん!!
検索オプションから車椅子対応にチェックを入れれば、エレベーターのある地下鉄入口ルートを案内してくれる。乗るべき電車が出て行った事もリアルタイムで確認可能です(笑)。
ホームでは車いす対応車両として表示された4両目あたりで待つと、ほどなくして電車が到着。いつもどおりキャスター上げをしてホームと電車の隙間を超えて乗車(小さな前輪がホームと電車の隙間に落ちるため)。
大きな前輪の車いすならキャスター上げをしなくても大丈夫なほど、大江戸線はホームの段差や隙間は小さい。
常時アプデされるグーグルナビならではのトラブルとは!?
ここまでは問題のないルート案内により車いすでもスムーズに来られたのですが、乗り継ぎ駅の門前仲町駅でトラブルが発生!
2018年に門前仲町駅乗り換えで移動した時には、地上に出るエレベーターへのルートが示されていた場所で…今回は駅構内に点線でルートらしき表示が!?
門前仲町駅の乗り継ぎで、前回とは違う点線でのもやっとしたルート案内が!?
「これはもしや外に出ないでも乗り継ぎが出来るルートができたのか!?」と思い、ルートで示された方向に目をやるも、その先には階段のみ…。
改札を出てもやっとしたルート案内の方向を見ると、車椅子では行けそうにない階段!
駅員さんに確かめてみたところ、やはりいちど地上に出るという以前グーグルナビでも示されたルートを教えてくれました。というワケで今回はグーグルナビで示された(駅構内?)乗り継ぎルートは使わずに、2018年に利用した時と同じ一度地上に出るルートを使用。
大江戸線門前仲町駅6番出口のエレベーターで地上に出て、門前仲町交差点の横断歩道を渡って、東西線門前仲町駅2番出口のエレベーターを使うルートを車いすで移動。
久しぶりの東西線は、22年前に比べると最新のホームドアが設置されていたり、ホームと車両の隙間や段差か改善されていたり、車両に車いすスペースがあったりと、大江戸線並みにバリアフリー化が進んでいました。
東西線門前仲町駅には透明のホームドアが設置され、電車とホームの段差も2~3センチほど。
乗車後は問題なくグーグルナビどおりに移動し、目的地である木場のJワークアウトまでスムーズなルート案内で到着することができました。
乗り換えでトラブルはありましたが、無事に目的地到着!
今回紹介したグーグルナビの車いすオプション検索機能ですが、昨年オレが作った解説動画に1年以上経った今でも「知らなかった!」とコメントがつくぐらいには認知度が低いです(笑)。2018年からサービスを提供しているめっちゃ便利な機能なのに!
今回はちょっとしたトラブルがありましたが、いつもはスムーズに行くので(トラブルはこれがはじめてかも)、周りに車いすやベビーカーユーザーのいる人は、ぜひ教えてあげてください。
今回ルートが変更されていた原因を検証してみた
とはいえ、門前仲町駅でのグーグルナビの乗り継ぎルートが変わった事が気になってしょうがなかったので、帰宅後にちょっと調べてみました。
そこでわかったのは、大江戸線には2019年ごろに階段昇降機「エスカル」と、車いす対応エスカレーターが装備されていたこと。ただこのルートがめちゃくちゃ使いづらい! しかもそのエスカルルートの先にはもうひとつ階段があり、そこでさらに車いす対応エスカレーターを使う事になるという移動難易度最高レベルの鬼ルート!
実際に車いすで、このエスカルと車いす対応エレベーターのふたつを使ったことがある人はわかると思うのですが、これらを使っての移動は当然ひとりでは無理です。なので、使用できる駅員さん(サービス介助士の資格をもった方?)の手助けが必要で、その駅員さんの手が空いていない場合はその前で数分待つことがあります(これはしょうがないコト)。
なんか、このルートを使えば“駅構内での乗り継ぎは可能なんですよ!”という闇の勢力の力を感じずにはいられないこのルート!(笑)。一応目的は達成されるのでしょうが、それによりいろいろな人の時間が奪われる感じ。
無論そいういうバリアフリーはオレをはじめ、大半の車いすユーザーは望んでいないいと思います。オレは仮にこのルートが使えたとしても、ひとりで迅速な移動が出来る地上に出るエレベータールートでの乗り換えを選びます! なんかこの闇のルートをみた瞬間、22年前の東西線の乗り換えで駅員さん4人がががりで運んでいただいた、申し訳ないコトをした嫌な記憶が脳内によみがえりました!
2019年5月に門前仲町駅のエスカルが使用停止だった時のリリース。左のエスカル使用ルートより、右のエレベーターを使っての地上迂回ルートのほうが断然便利!
ここからはオレの予想ですが、東京オリパラに向けた2019年ごろに門前仲町駅のバリアフリー化が促され、その時にエスカルや車いす対応エスカレーターでの移動ルートができたのだと思います。そしてその「(一応)移動が可能です」情報を元にグーグルナビのルートが改悪されたのでは?と。
2018年頃のグーグルナビにはこれと同じ地上ルートが表示されていました。いち車いすユーザーとしてはグーグルナビのルート案内は断然使いやすいこちらに戻してほしいです!
車いすユーザーになったこの22年、実際に使うユーザー置き去りにした、“体裁をつくろうだけのバリアフリー”をさんざん見てきました。それがかなり減ってきたな~と感じた矢先に、まさかこんな改悪ともいえる事例をグーグルナビ上で目の当たりにすることになろうとは…。
とはいえ、フツーにエレベーターで地上に出て乗り換えるルートは健在! なので、グーグルナビのフィードバック機能から、以前のルートに戻してもらえるようにリクエストを入れておきました。
グーグルマップの「フィードバック送信」機能を使って、車いすルートの修正をリクエスト。
車いすユーザーの皆さんも「え~実際に車いすやベビーカーで使うならこっちのルートがいいよ」なんてルートをグーグルナビで発見した場合は、フィードバック機能からルートの修正リクエストをお願いいたします。
ちなみに「グーグルナビとかうまく使いこなせないよ、スマホも持ってないし」なんて人は、ウェブで見られる「JRバリアフリーガイド」や「東京メトロバリアフリーガイド」がオススメです。
このガイドにはエレベーターの有無だけでなく、車いす対応エスカレーター、階段昇降機の設置場所、バリアフリートイレなど、それぞれの駅のバリアフリー設備が記載されています。車いすで初めてのルートを使う前日とかに、使う駅あたりの情報をちょこっと目を通しておくだけで、スムーズでストレスの少ない移動ができると思います!
ちなみに東京メトロと東京都交通局では、スマホが使えない方向けに、小冊子の「バリアフリー便利帳」を駅事務室で配布しているそうなのでそちらをぜひ!
アカザー(赤澤賢一郎)
週刊アスキーの編集者を経て、現在は車いすのフリー編集者・ライターをやっています。2000年にスノーボード中の事故で脊髄を損傷(Th12-L1)。車椅子ユーザーになって21年です。2018年に札医大で再生医療の治験を受け、2020年に20年ぶりに歩行!!!